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  • 執筆者の写真kaikoma

厳冬期に黒戸尾根を目指す皆さまへ


先ほど小屋にご宿泊のお客様が登頂して戻ってこられました。

場所によっては(九合目二本剣の烏帽子岩周辺)腰以上のラッセルとなったようですが、

充実の登山だったとのことでした。

さて、これから本格的に厳しいシーズンとなります。

八合目から九合目にかけて、数年に一度は必ず滑落死亡事故が起こる場所があります。

昨年も4月23日に死亡事故が発生しました。

ここでいま一度、この場所について皆さまと共有したいと思います。

八合目の御来迎場から進み、小さな鎖場を二箇所(これもそのうち埋まります)越えると、写真の赤石沢方面の展望が開ける場所に到達します。この写真の中央付近にある大岩を、夏道は左を巻くようについています。

現状のトレースも夏道通りのようですが、急な雪面になっているため注意が必要です。

この場所はもうしばらくしたら大岩を右から巻くようになります。

ちょうど尾根筋を登るラインです。

大岩を巻いてからはルートは同じ、夏には3mほどの鎖のある急なルンゼ状の地形に入っていきますが、いまここの鎖が埋まっています。

ここの場所の鎖は、もうGW頃まで使えません。急な雪壁となり、登山者の力量によってはロープを積極的に用いなければならない場所となります。

ロープがない場合は、間違いのないアイゼン・ピッケルワークが求められます。

ここでの滑落は、最終的には赤石沢の岩壁を飛び越え500m以上の滑落となり、まず助かりません。

そしてここでの事故は、必ず下山時に発生しています。

頂上を目指すには、必ずここを通過しなければならず、そして必ずここを下降しなければなりません。

登りでここを通過する前に、果たして自分はここを無事に下れるか、いま一度冷静に判断をしてから頂上を目指して下さい。

ここを抜けると黒戸尾根の象徴、二本剣の烏帽子岩です。

そしてじょじょに雪が風の影響で硬くなり、山頂に向かって伸びる尾根道を進むことになります。

この尾根上にも一箇所スラブ状の岩を通過しますが、ここも要注意です。特に下降時は気をつけて下さい。

冬が進み、より一層白くなってきました。

個人的には一番好きな季節でもあります。

雪山をする人にとっては憧れの場所のひとつかもしれません。

しかしここでの登山は、決してやさしいものではありません。

だからこそ登頂の瞬間にはこれまで以上の喜びがあり、下山したときには心の底から安堵するのだと思います。ここはそういう場所です。小屋にご予約をいただいても、刃渡りで「出直してきます!」といって下山される方もいらっしゃいます。小屋までたどり着いても、やっぱり登頂を断念される方も多いです。

通年営業の七丈小屋は、こんな厳しい季節でも皆さまをいつもお待ちしております。

厳しい登山のひとときを少しでも快適に過ごしていただきたいと思っております。

皆さまの充実した登山を、心よりお祈り申し上げます。

七丈小屋代表 花谷泰広


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